最高裁判所第一小法廷 昭和56年(オ)1277号 判決 1982年5月27日
上告人
甲野一夫
右訴訟代理人
柴山譽之
被上告人
乙野太郎
被上告人
乙野かおる
被上告人
乙野よし子
右三名訴訟代理人
上田茂實
小林由幸
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人柴山譽之の上告理由について
上告人の主張する事由は民訴法四二〇条一項三号の再審事由に該当しないとした原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(中村治朗 団藤重光 藤﨑萬里 本山亨 谷口正孝)
上告代理人柴山譽之の上告理由
原判決は判決に影響を及ぼすこと明らかな民事訴訟法(同四二〇条一項三号)の解釈に違背せるものであつて破棄されるべきである。
(一) 原判決は公示送達の申立により欠席のままの勝訴判決については再審申立における事由とはならないという。
本件は民事訴訟法第四二〇条一項三号の解釈ということとなるが、同条と同様の条文は同法三九五条一項四号がそれである。同条文の解釈においては、代理欠缺だけではなく訴訟能力の欠缺、中断中の弁論に基づく判決、当事者の責に帰し得ない事由に基づく欠席のまま受けた判決等にこれが類推されるとする。
民事訴訟法四二〇条一項三号にも同一の条文があり同様に解釈されなければならない。
原判決は再審制度は特別のものでありその事由はこれを厳密に解釈されるべきものとする。しかし、民事訴訟法三九五条一項四号、同四二〇条一項三号は同じ内容であつて、同一に解釈されなければ、法解釈の一貫性に欠けるものである。
よつて四二〇条一項三号においても当事者の責に帰し得ない事由に基づく欠席のまま受けた判決にもこれが類推されることとなる(民事訴訟法体系、兼子一、一八四頁)。
(二) ところで前件訴訟においては公示送達の手続により、上告人欠席のまま判決がなされている。
前件訴訟における原告、特によし子とは前件訴訟中に会い、夫婦間の問題につき話し合つたことがあり、又、勤務先に連絡して、来たほどであつて、その送達場所を知つていたものである。かかる場合は当然公示送達手続の取下げをしなければならなく、もし上告人にこの訴訟がわかつていれば、攻撃防禦方法の提出の機会もあり、判決の結果は変つていたものと考えられる。まさしく本件の場合は、当事者の責に帰さない事由に基づく欠席のままの判決ということができる。
右上告人の事実主張を充分証拠調べし、これに基づく判断を原審はすべきであり、違法をまぬがれない。